仙台高等裁判所 昭和25年(う)1022号 判決
原審第一回公判調書によれば、証拠調に先達ち裁判官が被告人に対し起訴事実につき詳細質問をしていることが明らかである。かかる措置は、裁判官が事件につき予断を抱かない、いわゆる白紙の状態で審理にのぞむべきであるとする刑事訴訟法の立前からいつて妥当であるとは認められないのであるけれども、刑事訴訟法の起訴状一本主義乃至右の白紙主義の原則は例外なく貫かれているとはいえないのであつて、或は被告人の陳述を聴きこれを勾留した裁判官とか、起訴前の証拠調に関与した裁判官がその審判に携わることを絶対に禁止している訳ではなく、また公判手続の更新の際とか、差戻後の審理の際には右の原則は貫かれないのである。これ等の場合と証拠調前の被告人に対する起訴事実の質問の場合とを対照して考えれば、該質問は穏当でないとはいえるとするも違法であるとまでは解し難い。従つて原審裁判官が前記のように証拠調前被告人に質問しているからといつて違法であるとは認められない。